So Da Tsu com
Study + Senses

≪前のページへ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
  11 12 13 14 15 16 17 次のページへ≫
 
*「態度的価値」はまわりの人間にとって大きな影響をもつ

僕は、ビクトル・フランクル――あのナチスの収容所の体験記『夜と霧』を書いた
精神科医、最近は風化してきたけれど――ですが、
彼の本を若い頃に読んで、今でも非常に印象に残っているのが、
彼が「人間の価値」ということについて書いている箇所なんです。
ああいう体験をした人ですから非常に説得力があるんですが、
もう病気で体が動かなくなってベッドに寝たきりになった人間に
一体どういう価値があるのか、という問いに対して、
その人が自分の状況に対してどういう態度をとるかが、
他の人間にとって、大きな影響を与えるのだということを
書いています。「態度的価値」と言うんですね。
それはアウシュビッツのことを考えると非常によく分かるんですよ。
収容所に閉じ込められて、そのなかでいろんな出来事は起こる、
そのときに誰がどんな態度をとるか、ということが
いかに人に生きる力と勇気を与えうるか。
たとえば、不妊症の人、ハンディキャップの子どもの親に対して、
この「態度的価値」という概念は、無為な感じをなくす、
唯一といえるほどのものだと思う。

*幸せになるということは物がわからくなること?

人間って、頭の足りないところがあって(笑)、
不幸な状況を経過しないと、そういうことが分からないんですね。
ほんとうにそれは難しい問題でね。
僕は子どものことでは、子どもを亡くしたお母さんに対して、
“どういう顔をしていいのかわからない”ということを考えるんです。
私の祖母は10人子どもを産んで
自分が死んだときに、葬式に出られたのが4人なんです。
6人の子どもが自分より先に死んじゃった。
そういうばあさんが生きてた時代には、若いお母さんが子どもを亡くしたって、
慰めようがあったんです。それは自分がさんざんやってきたことだから、
何でもなくそこを通り抜けさせてやることができた。
今、知り合いのお母さんが子どもを亡くしたときに、
皆さん、“どういう顔をしたらいいかわからない”じゃないですか。
つまり、人が幸せになるということは、ものがわからなくなるということでもある。
それは裏腹なんです。
だから貧乏人の社会は親切です。無一物でいるには貧乏人の社会の方がいい。
金があると、お前、働けとなる。もう永遠の問題ですね。
 
≪前のページへ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
  11 12 13 14 15 16 17 次のページへ≫
 
Home



(c) 2000-2007 So Da Tsu. com All rights reserved.