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*子どもは、自然の側に属してます。

子どもは社会の約束事にあわせて産まれてきたわけではないから、
なにか大事な会合があって、誰かに会わなくちゃならないとなると、
前の晩にはしかになる(笑)。
それは、まったく人間の都合と関係なしに動いている。
地震とか台風とか、そういうものと同じです。
そういうものの取り扱い、というのは、
今の都会で育つ人は必ず苦手なものです。
まず第一に、全然ちがう徳目を要求される。
明日社長と約束があるんだけど、子どもがはしかになって行けなくなっちゃって、
キャンセルして、「仕方がない」で通るか。
「仕方がない」ということが当然だというのが、自然を相手にしている世界。
それが当然ではなくて、「不祥事」だというのが、人工の世界ですね。

自然が都会から排除されているということが、はっきりわかるのは、
人間の生まれてから死ぬまでのプロセスに対する扱いです。
つまり四苦、生老病死ですね。これは、人間の自然ですよ。
生まれることも、年をとることも、病気になることも死ぬことも、
自分の意志ではない。勝手にそうなるんです。
これが、都会ではどうなっているかというと、
全部「不祥事」に変わっているんですね。

*病院で産むという特殊な時代

僕が子どもだったころ、お産婆さんの看板がいっぱいあって、
「生まれるところ」は自宅、というのが普通だった。
それが今は、病院で生まれる。
病院は、日常生活が営まれる場所じゃないでしょう。
つまり、お産、というのは日常生活のなかに含まれない特別な出来事に
なっていったわけです。
年をとることも同様で、老人ホームなどができてくるのも、
年をとるということが、日常生活から外れることの現れです。
病気は医者に行くのが当たり前、重くなったら入院するのが当たり前、
死ぬところはどうかというと、7割以上は自宅で死んでたのが、
この半世紀で、9割が病院で死ぬようになった。
「死」も特別な出来事なんです。全員が死ぬにもかかわらず、ですよ。
日常生活は、「健康で元気でまともな」人が送る、
それが、「当たり前」になっているんです。


*仕事よりも人間関係を優先するのが、組織なわけです。

もっと違いはいろいろあるんだけど、乱暴に言うとね、
こういう流れと子育ては完全に連動しているんだ。
しかも、生まれるところに関しては、人間は徹底的に手をつけてきましたから、
今はもうクローンまで話題になってる。
つまり、「産む産まない、はあなたの選択」どころじゃなくて、
どんな子どもを産むか、までコントロールできるんじゃないか、って
そういう話になっている。





*クローン問題。子どもの側には、なんの関係もない。

今、話題になっているクローン人間問題は、
それを裏返して子どもの方から考えると、
クローンで生まれようが、人工授精で生まれようが、
遺伝子操作で生まれようが、
生まれたときは自分の意志じゃないんだ、相変わらず。
まさに、自分の意識とは関係ない出来事なんだ、それは。
だからクローン問題の面白さっていうのは、
やっていいとか悪いと論議されているけれど、
子どもにしてみれば、何の関係もないというところですね。
どういう形で生まれようが、
生まれてきたのは俺の意思じゃないってところでは
全員、まったく平等ですよ。
つまり、それを僕は「自然」と言っているんです。
自分が計画して、契約書にハンコを捺して、生まれてきたわけじゃない。
生まれてくる前に子どもの意見を聞く、
芥川龍之介の『河童』(かっぱ)という小説もありましたけどね。
下級官吏で安月給だけど、生まれてくるか、と聞いたら
子どもが嫌だって言って、お腹がしゅーっとしぼむっていう(笑)。


*「クローン人間反対」は差別だ。

今、「生まれること」をめぐっての話というのは、
みな、基本的に親の側の意思だけで考えてます。
しかし、子どもにしてみれば、実際何の関係もない。
議論が一面しかない、というのがよくわかる。
クローンに関しても、「クローン人間反対」なんていう意見に、
そんな差別はないだろう、と俺は怒った。
そんなこと言ったら、双子はどうなる。
あれは生物学的にはクローン、自然が作ったクローンなんです。
人工的に作るな、と言っても、自然にはあるわけですからね。
動物によっては、ひと腹全部クローンというのも普通なので、
アルマジロなんか、そうですね。
同じデータ、細胞が同じだから、クローンですね。


*都会と意識の世界、つまり脳の世界です。

でも脳は体なんですよ、体は脳が作ったわけじゃない。
だから人間はもともとニ面性を持っているわけです。
それを昔は、「心身」と言いましたが、それは変わらないわけです。
心、つまり脳、意識、それを代表しているのが<都会>。
体を代表しているのは<田舎>ですね。
環境問題、環境保護というときに、皆さんが大抵意識していないのは、
その環境のなかに自分の体も入るということです。
どういう意味かというと、環境というのは
そもそも人間が作ったものではない、つまり外部です。
それと同時に自分の体も内部として、それに属している。


*人間の体だけ「自然」というわけにはいかない。

<自然>と<人工>、という対立関係で見るならば、
周りの世界、すなわち環境を、これだけ変更しておいて、
人間の体、という自然だけは変更しないでおく、ということはできないんです。
この顔気に入らないから、と整形する。
クローン問題に限らず、遺伝子操作でも何でも、
人間に手をつけることは「気持ち悪い」と感じるというけれど、
手をつけざるを得ないんです。
ダムの水を片方だけ高くしておいて、もう片方は低いままで
置いておくということはできないのと同じです。
高い方から低い方へ、水が流れてしまうに決まっているじゃないですか。


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