ニュアンスある色合いのシルクリボン。真鍮や小さな天然石のチャーム。
手首にくるくると無造作に巻きつけてきゅっと結ぶだけで、コーディネートのアクセントになります。
ネットで偶然見つけたアクセサリー。「これ、かわいい、欲しい!」と、編集部スタッフが思わず一目ぼれして購入しました。実はこれ、石巻で被災したママたちが一本一本、内職で手作りしているものなんです。
このブレスレットを手がけているのは「Amanecer(アマネセール)」。石巻の復興に取り組むNPO法人・石巻復興支援ネットワーク が、関西のアクセサリーショップ「SONRISA」とのコラボで立ち上げたアクセサリー・ブランドです。NPO代表の兼子佳恵さんにお話を伺いました。
リボンがグラデーションしているので、巻き方で表情が変化
首に巻いてチョーカーに。
足首に巻いてアンクレットにも。
―素敵なアクセサリーで、一目ぼれしました。石巻の復興に取り組むNPOが、なぜアクセサリーを作るようになったのでしょうか。
震災後、仮設住宅で支援活動をしていたときのこと、若いお母さんから「壁が薄いから、子どもの泣き声や足音がまわりに響いて、迷惑をかけているようで精神的につらい」と相談を受けました。
石巻では、多くの公園が仮設住宅や瓦礫置き場になったので、子どもをのびのびと遊ばせられる場所がほとんどありませんでした。津波で自宅が流され、生活再建のための費用が必要なのに、仕事は少ない。子育て中ともなれば、なおさら就業は難しく…。多くの親子が行き場のない不安を抱えながら、仮設住宅で缶詰状態になっていて、育児ノイローゼや虐待につながることを危惧しました。
「気を紛らわすためにも、生活の糧のためにも、本当は働きたい…」という切実な声をたくさん聞き、これは何とかしなければと思いました。
―仮設住宅にいても、保育所がなくても、ママが働けるような仕事を生み出そうと考えたのですね。
最初は、企業からの受託仕事をはじめました。ブローチやポーチの作成、商品に値札をつけたりするお仕事です。仕事をするようになってお母さんたちの目はいきいきとしてきて、「仕事があって本当によかった」と思いました。
―生活に目標や張り合いが生まれてきたのは大きいのでしょうね。でも、受託仕事があったのに、なぜオリジナルのアクセサリーを作ろうと?
受託仕事は単発の依頼も多いので、先の見通しが立たないこともありました。継続的に雇用をするためには、安定した仕事を生み出すことが必要だと痛感しました。それなら、自分たちで売れるものを作ろう!と。「時給700円~800円程度のお給料を払いたい」という強い思いもありました。
デザインや製作のご協力いただいたSONRISAさんをはじめ、商品に添えるカードのイラストやデザイン、印刷、PR面でのアドバイスなど、全国の方からたくさんのご支援をいただいて、何とかここまできました。2012年3月にはオンラインショップが立ち上がり、Amanecerは軌道に乗りつつあるところです。
事務所でミサンガブレスを作る女性たち。
―現在、Amanecerでは、アクセサリーの製作者11名とネットショップでの販売事務など1名を雇用しているそう。実際にアクセサリーを作っている方はどんな方なのでしょう。作り手の一人である、渡辺さん(27歳)にお話を伺いました。
渡辺さんは、夫と4歳、3歳の四人家族です。自宅は海岸から500mほどの場所にあり、3.11の津波にのまれて全壊。幸い、一家は全員高台に避難して無事でしたが、震災直後は仮設住宅に、その後はずっと親戚宅に身を寄せて暮らしていたそう。今年ついに自宅を再建し、これからの生活に向けて歩き始めたところです。
「アクセサリー作りに携わるようになったのは、2012年11月からです。最初は、1個作るのにも四苦八苦していましたが、半年以上作り続けてだいぶ腕があがってきました。 今は、ミサンガブレスを製作しています。震災直後、石巻の中学生が全国からの支援のお礼として、ミサンガを編んで送っていたんです。その話を聞いた方たちから、今度はたくさんのミサンガ用の刺繍糸が届きました。その刺繍糸を使って編んでいるのが、このミサンガブレスです。
石巻のイメージカラー3色。
青は海、白はお米、オレンジは太陽。
ミサンガって簡単にできるイメージがあるかもしれませんが、実はこれが大変で! 力加減にムラがあるとミサンガがよじれてしまうので、均一になるように丁寧に編んでいきます。デザイン性が高い商品なので、チャームや鎖を編み込んだり、工具を使ってエンドパーツやホックを取り付けたり、ひとつひとつの工程にも気を遣います。
ゴールドのチャームや石留め。
チェーンの編み込みも。
ホックはスナップボタン式で、
片手で簡単に留められる。
サクセサリー作りは、いつも子どもが寝たあと夜9時~12時頃に。まさに夜なべですね(笑)。作っているときは、何も考えず、ひたすら手作業に集中しています。これからの生活や、ローンの返済、子育てのこと……不安を数えたらきりがありませんが、アクセサリー作りをしているときはすべて忘れて無心でいられます。
以前は、避難生活のストレスでイライラしていることが多く、子どもを必要以上に叱ってしまうこともたびたびありました。でも今は「仕事がある」ということが精神安定剤になっています。こういう形で私も社会にかかわれているんだ、と前向きな気持ちにさせてもらっています。
どんな方々が使ってくださっているのかなあ? 自分が作ったものが全国の方に届いているのかと思うと、すごく不思議な気分です。
包みを開けてアクセサリーを手に取ったときは、作り手の方たちのひたむきなパワーが伝わってきて、何だかこちらが励まされました。女性のおしゃれ心を通して自然な流れで石巻とのつながりが生まれ、微力ながら現地のお母さんたちの支えにもなる――素敵なアクセサリーです。
★販売に伴う諸経費、素材費を除く全額が、石巻復興支援ネットワークを通じ、石巻で頑張っているママたちのサポート事業に活用させて頂きます。
価格/4,830円
サイズ/長さ約80cm、幅約15mm
素材/リボン:シルク100%、チャーム:真鍮(ゴールドメッキ)やシルバー、天然咳
価格/1,955円(1本)
サイズ/長さ約17cm
素材/刺繍糸、真鍮(ゴールドメッキ)
※2013年5月時点の情報を元にしています。最新情報は、Amanecerのホームページをご確認ください。