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いい子に育てようとするしつけは、子どもへのおしつけ。少年事件や児童虐待につながってしまう。ですから、私は、お母さんに「しつけをしないで」と言っているのです。
でも、「とんでもないことを言う」と反発する人がいます。「子どもは何もできないから、しっかりしつけをしないと立派な大人になれない」と。しかし、子どもをしっかりしつけようとすればするほど、実は虐待と同じ現象が起きているのです。愛情を込めて“しつけ”をすることも、“虐待をしてしまう”のも、もとはといえば同じ心理によるものだからです。
親になると、誰でも子どもにしつけをしようとしますよね。でも幼い子どもは、すぐには言うことを聞かない、思いどおりにはならない。このとき、ママは「これだけ苦労しているのに、あなたのことを考えているのに、どうして言うことを聞かないの?」と思う。そして「このままではこの子は将来ダメになってしまう」という気持ちが強くなっていっていきます。
しかし「この子をいい子にしなくては」と一生懸命になればなるほど、実はうまくいかなくて、その方法が見つからなくなってくるんです。虐待の場合も、初期には、「子どものため」、「こうしなくちゃいけない」という強い思いがあり、愛情を込めて育てているものです。
しかし、思い通りにいかず、方法が見つからないようになって、子どもに対して、次第に強くきつい言葉にを浴びせるようになっていきます。不機嫌な顔をみせる、怒鳴る、手が出る、外に閉め出す‥‥といった具合に、行為は連続的にエスカレートしていきます。
つまり、しつけと虐待は、本質的に心理面では同じことが起きているのです。間違ってはいけないのは、怒鳴る、叩くようになってから虐待が始まった、とする考えです。
児童虐待防止法の第一条で、虐待の定義は『子どもの人権を侵害する』と書かれています。親の思いどおりに子どもをコントロールする行為は、子どもの人権を侵害しています。つまり、虐待の本質的な定義は、「親による子どものコントロール」。子どもを親の思い通りさせようとする“しつけ”そのものがすでに虐待なのです。
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