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子どもの社会問題として連日のように取り上げられる「児童虐待」と「少年事件」、さらに「若者の自殺」「リストカット」「いじめ」などは、すべてにおいてたいへん密接な関係があります。
私は臨床心理士として、罪を犯した少年やその親と話をする機会をたくさん持ってきました。こうした心を病む人たちに寄り添うことで、心の法則性を導き出すのが私の仕事です。私は事件化してしまった「病理」を数多く見てきたことで、ある共通点を見いだしました。それは、少年事件を起こした彼、彼女らが、親から強い“しつけ”を受けてきたということです。
手塩にかけて育てた子どもが事件を起こしてしまった‥‥‥。その「しつけ」についてお話しましょう。
最近増えているタイプの少年犯罪を起こした子どもたちを調べてみると、多くの子が優秀でまじめな子です。親の言うことをよく聞いて、勉強や習い事もきちんとやる、成績優秀ないわゆる“いい子”です。親の思い通りのレールにのって順調に育ってきたはずの子どもたちが、どういうわけか、自分に力をつけたとき、つまり第二成長期(思春期)に突然事件を起こす。それも、悲しいことに、今まで一生懸命育ててくれた(しつけをしてくれた)両親を殺すといった“親殺し”事件も増えているのです。
思春期というのは、ホルモンの分泌が盛んになり、脳内環境も変わって精神的に不安定になります。そのときに、今まで支配されてきた状態に対する逆転現象が起きます。親に反抗せず、従順だった状態から、『お母さん、うざい』、『お父さんなんかいなければいい』と言った具合に。積み重ねられてきた抑圧が強ければ強いほど、その反動は大きな事件という形になることも多いのです。
では、母親が行った強い“しつけ”とは何だったのでしょうか。
ひとことでいえば、親の思い描くいい子にするためのしつけです。自分の理想とする子どもを「善し」とするもので、そこから逸脱する行為はすべて「悪」。許さないのです。子どもが親の言うことを聞かない、失敗する、などは許すことができません。その結果、叩く、蹴るといった体罰、怒鳴る、無視するなどの冷たい態度をとることになってしまうのです。
小さい子どもはお母さんが大好きですから、お母さんに嫌われたくないという強い気持ちが働きます。お母さんを怒らせないようにしよう。嫌われないようにしよう。そうやって、いい子を演じるようになっていくのです。
しかし、演じているのは偽りの姿。どこかに本当の自分を圧し込めています。その抑圧された気持ちは本人にも気づかないうちにどんどん溜まっていきます。それが、思春期に入って爆発してしまうのです。
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