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スペイン 良くも悪くもこれぞスペイン(全4回更新)

Episode1 スペインの出産事情

~妊婦の自主性を尊重?それとも管理がゆるい…だけ!?~

こんにちは。バレンシア在住の大田朋子です。アメリカ、ドイツ、インド、メキシコ、アルゼンチン、イギリスと住んだ後、2011年、英国人パートナーと当時1歳半の息子を連れてスペインに引っ越してきました。

バレンシアは、人口80万人を持つスペイン第3の都市で、オレンジと毎年3月に行われる火祭りで有名です。年間300日以上が晴れで、サンサンと太陽の光が降り注ぐ地中海性気候でも知られています。日本人が大好きなパエリア発祥の地で、お米もとっても美味しいです。

私には子供が二人いますが、第一子はアルゼンチンで妊娠し、日本に里帰り出産。第二子をスペインの私立病院で出産しました。

妊婦健診に家族総出で付き添い!

診療所には出産のための設備などは一切なく、出産は契約している総合病院で行われました。

診療所には出産のための設備などは一切なく、出産は契約している総合病院で行われました。

スペインでの妊娠・出産で一番戸惑ったのは、公立病院であれ私立病院であれ、妊婦健診などを受ける病院と、出産する病院が別々であることです。超音波健診や診察のために月に一回、診療所に通う一方、血液検査や尿検査、血糖検査などの検査は別の大病院で、出産もまたそことは別の総合病院で行われました。アルゼンチンでも日本でも、同じ場所で一人の医者にかかることに慣れていた私は、毎回医師や助産婦が入れ替わり立ち替わりするスペインのシステムに、はじめは少しとまどいました。

もう一つスペインでの診察で気が付いたのは、夫はもちろん家族も同伴で診察に来る人が多いこと。待合室に溢れるほど人がいるので「今日は待たされるかなあ」と思っていても、妊婦が1、2人呼ばれると待合室が空になるのを見て、一人の妊婦への付き添いの多さにびっくり!!私は、お腹の赤ちゃんの成長を家族で共有したかったので、エコー検査などがある診察のときには、パートナーと息子も同伴しましたが、それ以外は一人だけで病院に行きました。でも、一人で来ていたのは自分だけという場面が何度もあり、聞けば、女性一人での診察はシングルマザーだと認識されるとか、かわいそうと見なされるのだとか…。とはいっても、勤務中の平日の昼間から、旦那のみならず母親や義母など大人3~4人に付き添われても、全く合理的ではないような…?とはいっても、まあ、ここはスペインですからね。

診療所には出産のための設備などは一切なく、出産は契約している総合病院で行われました。

診療所には出産のための設備などは一切なく、出産は契約している総合病院で行われました。

担当医がお産に間に合わなかった…

お産ではバースプランのようなものは一切なく、私は自分がこだわることをノートに箇条書きにして、すぐに見せられるようにしておきました。不必要な医療介入を避けたお産をしたい、分娩台を使わずに自由な姿勢で産みたい、会陰切開をしてほしくない、へその緒は父親に切らせてほしいといったようなことを書きましたが、拍子抜けするほど、すべてあっさりと聞きいれられました。分娩室にはバランスボールが置いてあり、音楽やアロマの香りも好きな種類を選択できました。

陣痛には助産婦が付き合い、そろそろ産まれるというときになって、助産婦が産婦人科の医師を呼び出し、医師が来て赤ちゃんを取り上げます。私の場合は、病院に到着して1時間もしないうちに出産。早すぎて担当医師がお産に間に合いませんでした。自分の診療所から総合病院にやってくる医師もいて、私のようにお産が早すぎると間に合わないわけです。これは、診察する診療所と出産する場所が違うシステムの手落ちだなあと個人的には思いました。

産後1ヶ月まで母親の健診はなし!

昼食の一例。事前にメニューがまわってきてスープ、サラダ、肉、魚などの中から2種類好みのメニューを選びます

昼食の一例。事前にメニューがまわってきてスープ、サラダ、肉、魚などの中から2種類好みのメニューを選びます

朝食はパン類とドリンクだけで物足りない気がしました。母乳の出にはあんまりよくない食事ですよね…?(苦笑)

朝食はパン類とドリンクだけで物足りない気がしました。母乳の出にはあんまりよくない食事ですよね…?(苦笑)

食の国スペインらしく、昼食と夕食では事前にメニューがまわってきて、2種類の中から好みのメニューを選びます。一般的にスペインでの食事は、第1の皿、第2の皿、デザートという形式ですが、病院食でも同じでした。栄養などがきちんと計算されているのでしょうが、産後の体には油っこく感じました。一方、朝食はクロワッサンとカフェインレスコーヒーといった「あっさり」メニューで、全体的に母乳の出にはあまり貢献しない食事だと思いました。各ご飯の間には、フルーツやヨーグルト、ビスケットといった軽食が1日2回だされました。

普通分娩で何も問題なければ、母親は出産から48時間で家に帰ります。驚いたのが、退院までの2日間、母体の診察が全くなかったこと。「出血はどう?」と聞かれるだけで、結局私の検診は産後1ヶ月半までありませんでした。退院前に心配になって助産婦に聞くと、「自然なかたちで出産したのだから問題ない」と。無痛分娩などで麻酔を使った場合は診察があるようですが、自然分娩で出血も普通だと、出産後一度も診察がないまま退院ということに。なんともないのだから、それでよいじゃないかと言われればそうなのですが、ここまでほったらかしだと不安になってしまいましたよ。公立病院に比べて、診察が丁寧だと聞いていたのもあって私立病院を選んだ私でしたが、それでも日本での出産経験と比べると、丁寧さに欠けたような…?よくも悪くも、これぞスペインというのを肌で経験した妊娠・出産体験でした。

昼食の一例。事前にメニューがまわってきてスープ、サラダ、肉、魚などの中から2種類好みのメニューを選びます

昼食の一例。事前にメニューがまわってきてスープ、サラダ、肉、魚などの中から2種類好みのメニューを選びます


朝食はパン類とドリンクだけで物足りない気がしました。母乳の出にはあんまりよくない食事ですよね…?(苦笑)

朝食はパン類とドリンクだけで物足りない気がしました。母乳の出にはあんまりよくない食事ですよね…?(苦笑)

2013年11月15日更新

プロフィール

大田朋子

1976年神戸生まれ。ライター&プロジェクト・プロデューサー。同志社大学(商学部)卒業。アメリカ、ドイツ、インド、メキシコ、アルゼンチン、英国と引っ越しを重ね、2011年よりスペイン・バレンシア在住。英国人のパートナー&朔太郎(2009年生まれ)&ジュノ(2013年生まれ)の4人家族。

近年、“複数の国で働くノマドママ”として各メディアから取材される。人生モチーフは、“世界が拠点な生き方&世界が拠点な子育て”。共著に「値段から世界が見える! 日本よりこんなに安い国、高い国 (朝日新書)」がある。

世界が拠点な生き方&子育てサイト:http://tomokoota.wordpress.com/
大田朋子ツイッター:https://twitter.com/TomokoOta

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