おなかの赤ちゃん順調に育ってる?
“胎児発育曲線”でわかる「大きい・小さい」の意味!(2)
昨年、母子健康手帳が10年ぶりに大リニューアル。多くのママから寄せられた意見を元に、妊娠中の出来事や気がかりなどを書き込めるメモ欄や、赤ちゃんのうんちの色から病気をチェックするカードが付いたり……前より使いやすくなった!と評判です。
その中に、これまでになかったグラフが登場。それが「胎児発育曲線」です。これって何?どう見たらいいの? このグラフを開発した産婦人科医の篠塚憲男先生に取材敢行。グラフの見方や使い方を教わってきました。
―胎児発育曲線の二つの線の外に出てしまった場合は、どうなるんですか?
健康な胎児が100人いれば、もっとも大きい子2~3人、もっとも小さい子2~3人は、この線から外に出ます。線から出たからといって必ずしも問題があるわけではないのですが、何か胎児の正常な発育を妨げる要因がないか、探る必要があるのです。
―上の線よりも大きい場合、どんな心配があるんですか?
ママが妊娠糖尿病を発症していると、胎児が大きく育ちすぎる場合があります。ですから、尿糖や血糖値の検査をします。 妊娠糖尿病でなければ、胎児が大きいのは個性です。ただし、出産時に赤ちゃんがスムーズに産道を通れなくて難産になる確率があがります。
―下の線から出てしまった場合は?
発育を妨げる主な原因としては、胎児の染色体異常や心臓などの形態異常、母体側では妊娠高血圧症候群、風疹やサイトメガロウィルスなどの感染症、喫煙、アルコール、薬剤、低酸素状態、栄養不足など。また、胎盤や臍帯の異常も、胎児の発育を妨げる要因になります。
―そんな病名を聞くと、赤ちゃんの推定体重が線の内側でも、ギリギリのところにいるだけで心配になってしまいます…。
確かに、産科医は非常に慎重に考えているので、線の内側に近い場合は胎児発育不全と考えて、詳しく状態を診ていくことがあります。胎児の発育を妨げる要因があるなら、早くそれを見つけて、良いコンディションで産んであげるための対策を考えたいからです。 とはいえ実際には、ぎりぎりのラインにいても、線に沿ってコンスタントに大きくなっているのであれば、心配ないことが多いんです。気がかりなのは、それまで真ん中あたりにいたのにだんだん発育がにぶってきて、線の外に出てしまうとき。これは慎重に調べてあげたほうがいいですね。
―健診のときに、医師が「大きい子だね」「ちょっと小さいね」と口にすることがあるんですよね。言われたほうは「なんでだろう?」「赤ちゃんは大丈夫だろうか…」と不安になってしまいます。
それは、ちょっと不用意な一言ですね。多くの場合、この「大きい」「小さい」は個人差なんです。「胎児発育曲線」をみれば、個人差がいかに大きいかわかります。20週の場合、小さい子は210g、大きい子は416gと、2倍もの差があるんです。30週だと、1098g~1842g。約750gもの開きです。ひとりひとり違うのですから、この範囲内におさまっていれば小さめでも大きめでも、そう心配することはありません。
ただし、医師としては、かなり慎重に見守っています。気がかりがある場合は念のため1~2週間後にもう一度計測に来てもらったり、羊水量や胎盤の状態を確認したり、詳しく検査をするために高度な医療機関に紹介するなど、入念にフォローをしていきます。 もし、こういう具体的な指示はなく、「大きいね」「小さめだね」という一言だけだったら、あまり気にすることはないと思います。念のため、「心配するほど、小さいのでしょうか?」と聞いてみるといいでしょう。 ちなみに、「胎児発育不全」と指摘されて検査を受けた人のうち、疾患や感染症など原因が見つかるのは3割ほど。7割は特に原因が見つかりません。そういう場合は、胎児が小さいのは個性と考えられます。
―「胎児発育不全です」なんて診断されたらびっくりしますし、赤ちゃんは病気の可能性が高いのかと思ってしまいます。でも、そのうち7割は個性なんですね!
そうです。ですから、もし健診で何か指摘されて詳しい検査をすることになっても、まずはあまり心配せずに、検査を受けてください。そして、もし検査で何か原因が見つかったならば、治療をしたり、良い状態で産んであげるための対策を考えることができる、と前向きに考えましょう。
2013年3月26日更新