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廣戸聡一スポーツから導きだされた、新・子育て論 廣戸聡一
Study + Senses
 
抱っこで、体の中心が安定する感覚を覚える。
寝返り・はいはいで、脳が刺激され、
立つ・歩くでバランスを学び、
跳ねる衝撃で、骨が強くなっていく――。
「子どもの体の発達のプロセスは、運動の基礎をつくるプロセスである」
運動神経がいい、頭のいい、協調性のある、子どもに育てるために。
スポーツから導きだされた、新たな育児へのアプローチです。
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廣戸聡一(ひろと・そういち)
フィジカルスーパーバイザー。1961年東京生まれ。野球、剣道、格闘技などさまざまなスポーツを経験した後、専門学校で整体治療を学ぶ。スポーツ整体「廣戸道場」を主宰し、施療家として活動する傍ら、人間の体は4タイプに分かれるという独自の「4スタンス理論」を確立。その時々の状況に合わせた体づくりを勧める「レッシュ・プロジェクト」を立ち上げ、普及に努めている。
トレーナーとして、1998年及び2002年米大リーグ、01年ソルトレイク五輪などにも参加。廣戸氏の理論を取りいれることで、体が楽なのにタイムが上がる、故障しないなど、一流のアスリートたちからも注目を集め、野球、陸上、ボクシング、柔道、ゴルフ、サッカーなどさまざまなスポーツ選手から、チェリストなど音楽家まで「レッシュ理論」の信奉者が急増中。一方で、高校野球部や親子体操など、子どもの体への取り組みにも力を入れている。
著書に『ボディIQ 頭の良い身体を作るコーチング理論』『キミは松井か、イチローか』『ぐんぐんこどもの足が速くなる』ほか多数。
廣戸道場HP:www.h-dojo.net
NPO法人 レッシュ・プロジェクトHP:www.reash-project.net

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「抱っこ」で体が安定する感覚を覚え、
「寝返り」で脳との神経回路が増えていく。



私たちが運動をするとき、よく「コア」とか「インナーマッスル」といういい方をしますが、これは赤ちゃんのときに、まず鍛えておかなくてはいけないものです。赤ちゃんが体をつくっていくプロセスというのは、実は、運動の基礎を作るプロセスでもあるんです。

生まれたての赤ちゃんは、もにょもにょ動いているだけですが、そこから最初に何をするかというと、しがみつく。腕と足はまだ使えませんから、体全体で親にしがみついてきます。しがみつくことで、自分の体の中心、コアが安定する感覚を学んでいくのです。

ですから、この時期はいっぱい、抱っこしてあげてください。たくさん抱っこしてスキンシップすることで、赤ちゃんは体の中心が定まっていき、心も安定するのです。

しがみつく感覚を養うことは、ゆくゆく体全体を使ったなめらかな動きにつながります。体操や踊りなどで、表現力があるとか、ないとかいいますが、まさにこの表現力に必要な感覚でもあります。

赤ちゃんは、次に肩の関節が発達して、自分の手で体を支え起こすという動きができるようになります。そして股関節が発達してくると、体の方向を転換する、「転がる」という動作が出てきます。寝返りですね。

赤ちゃんは、ごろんと転がりながら、自分の体がいったいどっちを向いているのか、を学んでいます。初めて寝返りをした赤ちゃんが、目を丸くしてキョトンとしたり、寝返りをしてはいかにも楽しそうに笑ったり……。

転がる前の景色と、転がりながら見ている景色と、転がり終わったときに見える景色、みんな違います。転がることで、自分と空間との位置関係がわかるようになる。それによって脳とつながる神経回路も、次々とできあがり、数を増やしていくのです。

この位置関係が体でわかっていないと、スポーツはできません。

たとえば野球の場合、飛んでいくボールをいちいち見て走ってはいられません。ボールを瞬時に見て、落下地点を予測して走り、キャッチする。投げるときも、味方が走りこんでくるだろうという場所を予測して投げます。こうした動きは、今、自分の体がどこを向いているか、空間のどの位置にあるのか、を感覚として身につけていないとできないのです。


しがみつく+転がる=はいはい
全身を使った動きで、神経回路がつくられていく。



さて、寝返りをした赤ちゃんは、次に「はいはい」をはじめます。これは、「しがみつく」と「転がる」を組み合わせた動きです。大地にしがみつき、寝返りをするときに使う体幹の動きで、はいはいになるのです。

大人がはいはいをマネると、背中が固まっているので手足の小手先だけの動きになってしまいますが、赤ちゃんは上半身と下半身をねじって、もう必死になって体全体を使います。おむつをしたお尻がモコモコ動いて、肩がいっぱい動く。見ていて本当にかわいい動きですが、このはいはいをすることで、肩甲骨と肋骨の関係性が出来てくる。そして筋肉を骨に結合する腱部も熟成されていきます。

赤ちゃんは、ほかにもまだまだいろいろな動きをしています。仰向けになりながら足をキックしてみたり、足を持って口の中に入れようとしてみたり…。起きている間中、じっとしていることがありません。赤ちゃんは、いろいろなことをしながら体の動きを学んでいるのです。

そうした動きが脳に刺激となって伝わり、たくさんの神経回路を作ります。動くことで赤ちゃんは運動能力を養っているのです。ですから、危ないからといって、赤ちゃんの動きを制約してはいけません。安全なスペースを作って、赤ちゃんがしたいだけ転がり、好きなようにはいはいできる工夫をしてあげてください。


「立つ」「歩く」でバランスを学び、
「跳ねる」で、骨が強くなる。



寝返りやはいはいをした赤ちゃんが次にするのは、「立つ」ことです。このとき、赤ちゃんは初めて、自分の体の重さを感じます。それはとても重要なことで、自分の重さを受け止めて、しっかり地面を踏み締めないと、安定して立つことはできません。つかまり立ちから、転んでは起き上がり、またつかまる。このときに、自分の重心が安定するバランスを学んでいます。

ようやく立てた赤ちゃんは、次に歩こうとします。「歩く」ということは、どういうことかというと重心を移動させることです。バランスを保ったまま、片足に重心を移動させ、また反対側の足に移動させる。これが歩くということです。

片足で立って安定しなければ、どんなスポーツもできません。野球でも、片足からもう一方の足への重心移動がなければ、絶対にボールを強く投げることはできません。

歩けるようになった子どもは、今度は「跳ねる」ことを始めます。買い物などに行くと、「買って〜」とかいいながら、子どもはやたらと跳ねるでしょう。跳ねるのは「走る」準備でもあるのですが、骨格をしっかり作るためにもとても重要です。

「跳ねる」ことで体に起こるのは、「衝撃」です。跳ねてみればわかります。重力に反して体重の何倍もの重さがかかり、ドーンという衝撃が体を貫く。そのとき、骨がきしみます。これが重要なのです。「骨がきしんだ」という信号が脳に送られると、「このままだと体が壊れるから、骨を強くせよ!」という指令を脳が出します。それで骨がどんどん強固になっていく。骨格が発達していくのです。これをピエゾ現象と呼びます。

大人から見ると「落ち着きのない」、ときに「困った」子どもの動きは、発達にとって必要なんです。

こうして骨格が発達し、関節も強くなってくると、そこから筋肉が発達します。骨格と骨格を結ぶのが筋肉ですから、骨格の発達なくして筋肉だけを発達させることなどできません。人間の体は骨格の強度に比例してしか、筋肉はつかないようになっています。

竹ヒゴに強力なゴムを張れば、バチンッと壊れてしまうでしょう。これと同じで、小さい子どもに筋トレをさせても、いい結果は出ません。関節を痛めたりするだけです。

人間は自分の体を作り上げていくのに必要なことは、生まれたときから自然にしているのです。それを、「英才教育」という名のもとで、どこかを飛ばしてしまうとよくないのです。

たとえば、はいはいが始まった時点で、「一日も早く立たせたい」「歩かせたい」というような親の考えが入ってくるとよくない。骨や、骨と骨を結ぶ関節が、まだ立てる状態になっていないのに、無理に立たせようとすると、ゆがんでしまったりするのです。
「はえば立て、立てば歩めの親心」はわかりますが、どの段階も早ければいいというものではない。その子の体の発達を十分に見守る姿勢が、いちばん大切なのです。
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