胎児の大きさ Q&A

Q2

初めての赤ちゃんを授かり、今妊娠7週です。産婦人科を受診した際に「胎児(胎芽)が小さいので、流産になるもしれない」と言われてしまいました。私は流産する確率が高いんでしょうか?

A

妊娠初期の胎児のサイズから、流産の可能性や胎児の発育について判断することはできません。この時期に医師が「赤ちゃんが小さい」などと妊婦さんに伝えることは混乱や不安を招くだけで、適切な対応とはいえないと思います。

そもそも妊娠7週といっても、数日~数週の誤差が出ることがあるのです。それは、妊娠週数を最終月経(いちばん最近の生理の初日)から計算しているからです。 たとえば、1月1日に最終月経が来たとすると、この日を「妊娠0週0日」と数えます。そこから、1週間後の1月8日が「妊娠1週0日」、2週間後の1月15日が「妊娠2週0日」……7週間後の2月19日が「妊娠7週0日」です。

ところが、この数え方は「いつ排卵(受精)したか」ということが考慮されていません。最終月経から2週間後の1月15日が排卵日だったかもしれないし、この周期はいつもより遅れて1月20日過ぎてからだったかもしれません。 同じ妊娠7週でも、排卵日が1週間もちがえば、胎児の大きさがちがうのは当然。小さくて当たり前です。

また最終月経を間違って記憶している場合もあるでしょう。そうなると、妊娠週数の計算の大前提が変わってしまいます。

つまり、最終月経から計算した妊娠週数は、誤差が生じている可能性があるのです。そこで、妊娠9週〜11週頃に胎児の座高(頭殿長/CRL)を、12週以降の場合は頭の大きさ(児頭大横径/BPD)を超音波で計測して、その数値をもとに妊娠週数を修正することがあります。この時期は胎児の個体差が少ないので、大きさから妊娠週数を割り出せるのです。これを「修正妊娠週数」といいます。 最終月経から算出した妊娠週数よりも、胎児の大きさから割り出した修正妊娠週数のほうがより正しい数値です。

ですから、妊娠の初期に、赤ちゃんが大きいとか小さいということに、一喜一憂する必要はありません。胎芽の心拍の有無、発育の程度、胎嚢の大きさなどを総合的に見て判断します。不安なときは、1〜2週間後にふたたび受診して、赤ちゃんが育っているか診てもらいましょう。

(回答/産婦人科医 篠塚憲男先生)

篠塚憲男(しのづか・のりお)先生

プロフィール

篠塚憲男(しのづか・のりお)先生

胎児医学研究所代表/医学博士/産婦人科専門医 /超音波専門医・指導医/臨床遺伝専門医
浜松医科大学卒業後、東京大学医学部、米コーネル大学留学、帝京大学産婦人科学教室講師を経て、現職。 超音波検査による胎児体重の測定法や胎児発育曲線などを開発。超音波検査機器の開発監修なども務める。
経済産業省「どこでもMY病院構想 周産期小児ネットワーク実証事業(H23−H24)」に参画。瀬戸病院(所沢市)にて、胎児の疾患の検査や出生前診断・セカンドオピニオンの外来を行う「特殊超音波外来」を担当(月・水、完全予約)。

胎児医学研究所
瀬戸病院

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